おおすすめ作品 娼妃地理記(しょうひちりき)

蔦重と朋誠堂喜三二初のコラボ作品
細部までこった高度な、
おやじギャグ満載の洒落本

「娼妃地理記」が蔦重と喜三二の初のコラボレーションとなりました。それまで新吉原俄(にわか)のパンフレットである「明月余情」の序文、跋文しか書いていません。

 喜三二は江戸留守居役(外交官)をつとめる秋田藩のお武家様でしたので教養が高いのです。そのうえ藩の経費をつかって頻繁に妓楼に通っていました。喜三二は吉原きっての通人として吉原の紹介役としてはうってつけだったのです。そのポテンシャルを余すことなく活かして、機知に富んだおやじギャグをたっぷりちりばめた新吉原を紹介する洒落本として「娼妃地理記」をつくりました。

ドラマでは尾美としのりさんは「どうだろう、まあ」と連発しています。これは、この本を制作する戯号である「道駝楼麻阿」の前振りだったようです。

浮世絵カフェでは江戸期オリジナルの「娼妃地理記」と復刻版の両方を常設展示しています。復刻版も販売しています。

ダジャレの戯号「道駝楼麻阿 どうだろうまあ」=朋誠堂喜三二

【ストーリー】

気になる内容ですが、「北仙婦州吉原大月本国」という、仮想の国にある新吉原のエリアガイドとして初期設定しています。そもそもこの「北仙婦州吉原大月本国」という名称自体がダジャレになっています。北仙婦とは北里にあった吉原にいる遊女という意味です。大日本国にたいして、日の陰である月と入れ替えて「大月本国」としたわけです。当時の人にはわかりやすい洒落になっていました。

 ダジャレは序文から始まります。「どうだろう、まあ」という、てきとうな感じの戯号からはじまっています。その、落款には「ひろめて・くんな」と読める押印があります。文章としてもデザインとしても、笑みがこぼれてしまう機知あるダジャレが仕込まれています。序文から最後の跋文の隅々までダジャレを探したくなる編集がなされています。

「大月本国地図=新吉原廓内地図」新吉原を海原に見立てた地図。絶妙な地名をつけています。

洒落は効いていますが、中身はしっかりとガイドブックとして機能しています。通り、町名、妓楼を月本国の海や、群としてたとえながら、そこにいる遊女を景勝地や泉に見立てて案内し、遊女の個性を紹介しています。また、商人が販売している物産や飲食店も紹介しています。喜三二と蔦重のタッグはのりのりだったのだろうと想像できる楽しい一冊になっています。

多数の吉原名物が五十間道には並んでいた。

[娼妃地理記 序] 出典:国書データベース
[題名] 娼妃地理記(しょうひちりき) ダジャレ 笙 篳篥(しょう ひちりき)同じ音
[著者] 道陀楼麻阿(どうだろう まあ) 朋誠堂喜三二
[版元] 蔦屋重三郎
[発行年] 安永6年
浮世絵カフェの蔵書は安永6年のオリジナル
大正15年制作の復刻版は販売可能。 
[仕様] 木版本 17.3×11.6cm  総六十丁