【大河ドラマ~べらぼう】第29話

笑いで仇を討つ―‼蔦重と山東京伝のベストセラー登場!
誰袖の笑顔を取り戻すために蔦重が選んだ仇討ちとは⁉

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江戸生艶気樺焼 出典 浮世絵カフェ蔦重 所蔵

大河ドラマ「べらぼう」29話では、前話で蔦重と田沼意次が決意した、田沼意知の仇討ち
が大きく前進しました。田沼意次の方は、蝦夷地を調査していた平秩東作が松前藩の裏帳
簿を入手。これは松前藩が抜け荷により私腹を肥やしていた証になるもので、平秩東作は
命からがら逃げかえるようにして持ち込んだものでした。そして、この帳簿は亡くなった
意知が命と引き換えにしても手に入れようとしていたもので、意次は意知の遺志を継ぎ、
松前藩から蝦夷地を召し上げる上地に本格的に取り組みます。一方、蔦重は前話で北尾政
演が持ち込んだ手拭いの男の絵を使い、笑える黄表紙を作りたいと、戯作者や絵師たちに
提案。まずは政寅が考えた草稿を囲み、妻のていや恋川春町、明誠堂喜三二、大田南畝、
小田新之助らが集まり、試し読みが行われましたが、評価はまちまち。ていは「私、この
話のどこがおもしろいのかわかりません。これは田舎から出てきた若い方が江戸で騙され
る話でございますよね。しかも、この方は世慣れておらず、それがゆえに騙されるという
のが気の毒で…」、新之助も「俺は、一旗揚げようと江戸に出てくるのもひっかかるな。
いま田舎から江戸へ出てくるのは飢えた流民ばかりだ」と指摘します。これにより、イチ
からやり直しとなったため、心が折れた政寅は「俺は降ります」と言って席を立ってしま
います。

江戸一番のゆるキャラ「艶次郎」が誕生

この苦境を脱するヒントとなったのが、「その絵、ちょいと佐野様に似てますね」という
鶴屋喜右衛門のひと言でした。たしかに手拭の男の顔と佐野政言の人相がよく似ているた
め、どうしても真面目で苦労が多く気の毒に思われた政言を笑いに変えるのは気が引ける
というわけです。そこで、蔦重は「気の毒じゃなきゃ笑えるってことか…」と、大金持ち
の一人息子で甘い汁しか吸ったことのないバカ旦那を主人公にすることを提案。この提案
をもとに政寅たちが再び集まり、アイデアを出し合うなかで山東京伝(北尾政寅)の代表
作となる黄表紙「江戸生艶気樺焼」(えどうまれうわきのかばやき)が誕生します。そして、蔦重は意知を失って抜け殻のようになっていた誰袖のもとを訪れ、できたばかりの物語を読み聞かせます。
物語では、浮名という遊女に恋し、浮名の間男になりたいと、主人公・艶二郎が奔走。この男の見栄と妄想にあふれた滑稽な生き様に、誰袖もついに笑い声をもらします。そこで、蔦重は「俺ができる仇討ちは佐野が奪ったお前の笑顔を取り戻すことなんだよ。俺にはこれしかねえ」と語ります。
このセリフ、とても格好いいですよね。このセリフにグッときた視聴者
も多かったのではないでしょうか。