【大河ドラマ~べらぼう】第28話
被害者に石が飛び、加害者が英雄に。
真実を曲げる世論に対し、蔦重と意次はどのように立ち向かうのか。

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田沼意知がついに死去―。大河ドラマ「べらぼう」28話では、冒頭から前話の続きとなる刀傷事件が描かれ、それから数日後、看病する実父・意次に看取られながら、意知は帰らぬ人となりました。意知を襲った佐野政言も切腹が命じられ、田沼時代の終焉を予感させる大事件となりました。後日、蔦重たちが市中を進む意知の葬列を見守っていると、「天罰だ!」と叫びながら石を投げる大工姿の男が現れます。その叫びに同調した群衆からも、田沼政治に対する不満の声とともに棺や駕籠に向けて石が投げつけられます。そんななか、誰袖が棺を守ろうと駆け出しますが、容赦なく石が飛び交い、誰袖の額にも石が直撃。救出した蔦重に向かい、「仇を討っておくなんし!」と訴える姿が描かれました。田沼政治に対する不満を強める原因となった天明の大飢饉は、江戸三大飢饉の一つにも数えられ、全国で90万人以上の餓死者を出したと言われています。その怨嗟の声が田沼親子に向かったわけですが、米の不作の原因となる天候不良も浅間山の噴火も、田沼親子の責任ではありません。また、この時期は前話で蔦重が意知に提案したように、幕府が大坂で集めた米を江戸に送り、安値で払い下げるなどの政策が実り、米価が一時的に安定していました。これは田沼政治の功績と評価できそうですが、民衆は逆に「佐野様が田沼の息子を斬ったから、米の値が下がった」と信じ、「佐野世直大明神」として意知を殺した佐野政言を英雄としてまつってしまいます。これを見た田沼びいきの蔦重は「斬られた方が石投げられて、斬った方が拝まれるってのは…」と思い悩みます。そして、誰袖を励ますためにも仇討の方法を考えますが、政言が切腹した今、仇討の相手がいません。
そこで蔦重が考えたのが、意知の死をもとに政言を悪役として描いた黄表紙です。しかし、相談した書物問屋の須原屋市兵衛からは「ご公儀のことは本のネタにしちゃあならねえ。間山が火を噴くのも、米の値段が下がらねえのも田沼様のせい。佐野は天に代わって田沼様を成敗した。世の中はそういう筋書きをたてたんだ」と反対されます。そして、飢えに苦しんだ人々の気持ちを変えることは簡単にできないことを悟ります。一方、誰袖が身請け先として囲われていた土山宗次郎の屋敷では、誰袖が白い着物に身を包み、一心不乱に藁を打つ呪詛を行っていました。そんな姿を見た蔦重は何もできず、彼女を救う妙案も浮かびません。そんな折、北尾政寅が蔦重のもとを訪ね、手拭合のデザインを見せます。その中の一つ、暖簾の隙間から男がのぞき込んでいるデザインを見て「こいつなら、できるかもしんねえ。こいつならもう一度あいつ(誰袖)を笑わせられるかもしんねえ」と笑みを浮かべます。これが蔦重にどんなヒントを与え、どんな秘策を思いついたのかは今後の楽しみです。一方、田沼意次も息子を死に追いやった刀傷事件の黒幕に一橋治済がいることに気づきます。そして、息子の無念を晴らすため、息子のやり残した仕事を引き継ぎ、完成させることで仇討とすることを決意。こちらの仇討もどうなるか、目が離せません。