【大河ドラマ~べらぼう】第26話

天明の飢饉により米価格の高騰に苦しむなか、蔦重の母・つよが登場!
蔦重の言葉をヒントに、田沼意知が米騒動の打開策を発案

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金平子供遊 版元 耕書堂 画 歌麿門人 千代女
出典 国書データーベース

米の値が上がると踏んで、大阪の堂島(商品取引所)でまず値が吊り上がり、それを見た米問屋、仲買人、札差などが売り惜しみ、米価が昨年の倍の値になりました―。まるで、最近のニュースを聞いているようですが、これは大河ドラマ「べらぼう」26話の冒頭、江戸城で老中が米の不作の報告を受けているシーンの話。前話で起こった浅間山の大噴火の影響もあり、天明の大飢饉が発生し、当時は多くの餓死者を出すほど深刻な問題となりました。報告を受けた老中・田沼意次は取り急ぎ商人たちに値下げを命じますが、商人たちが従うかどうかはあやふやで、騒動は収まる気配がありません。当然、蔦重も米不足の現実に直面。奉公人たちの食事、勝手に入り込んで食事をとる絵師や作家たちで、蔵の米はどんどん減っていきます。

実在した母の実像は?

26話では、そんな来客者のなかに、なんと蔦重の母“つよ”が紛れ込んでおり、残り少ない米を食べていました。本名広瀬(丸山)津与(つよ)は7歳の時に蔦重と生き分かれた実の母。父は丸山重助です。蔦重は、「今さら何しに来やがった」と激怒して追い返そうとします。しかし、「孝行したいときに親はなしと申します」と間に入った妻・ていのとりなしもあり、つよは同居することになりました。ところが、この“つよ”が来客者に無料で髪結いを行い、その間に店の本を渡しながら、蔦重が本の宣伝をする展開に。つよのスキルが思わぬ形で役立つことになりました。実はつよは教養が高いことが推定されます。母つよは吉原連に参加しており、蔦重の刊行した狂歌集に数回の発句を残しています。蔦唐丸母という戯号にて。実の母が子を想わぬはずはなく、孝養を尽くしたい蔦重とつよは同居して家業繁栄へ精力的に行動していたと思われます。母つよは妻貞(てい)とともに早々に耕書堂になじんでいたことが想定できます。

一方、意次の命令に従い米を正規の値段で販売する商人は一部のみで、庶民の生活はますます困窮。そこで「自分達にも何かできないか」と考えた蔦重が、ある突飛なアイデアを思いつきます。

天明の大飢饉を吹き飛ばせ!

蔦重と太田南畝等は天明狂歌ブームへ始動。蔦重は「暗い世だからこそ笑いを」と、正月に向けておめでたい狂歌集を作ることを発案。蔦重のこの想いに賛同し、大田南畝や歌麿が協力し、新たな黄表紙の作成に取りかかります。  

そんな蔦重のもとを、今度は新たに若年寄に就任した田沼意知が訪れます。米の売り惜しみをする商人たちにどうしたら米を出させることができるか、商人を動かすには商人の知恵を借りるしかないと、蔦重に打開策を相談しに来たのです。すると、蔦重は黄表紙の話をするとともに、良い本を作っても地本問屋の仲間に入れてもらえなければ流通させることができず、自由に商売ができなかったと、書物の世界の「仲間制度」にさんざん苦しめられてきたと話します。この話にヒントを得た意知は、米を扱う仲買や問屋の株仲間制度の廃止を発案。米業者の結束を解き、売り惜しみや価格操作を防ごうとします。現在、米の流通は自由化されて誰でも集出荷、販売ができます。しかし、「消えた21万トンの米」が話題になるなど、消費者の間では米の流通に対する不信感がぬぐえません。ならば、いっそのこと米の生産から加工、流通、販売、消費までをデータ連携する「スマートフードチェーン」構想を義務化してみたら、売り惜しみしている業者も見える化されるのでは…と、26話を見ながら考えてしまいました。