大河ドラマ~べらぼう第21話

画像 吉原傾城 新美人合自筆鏡
出典 ColBase
怪演!えなりかずきさん
2代大文字市兵衛を伊藤淳史さんがキャラ変えで名演技!
えなりさんが見事に豪胆かつ傲慢な松前藩主役を演じてました。怖かった。伊藤淳史さんは初代の大文字文楼が亡くなって養子として2代目大文字市兵衛を継いで再度出演してましたが、しなをつくって初代とは対照的な女性的なキャラだったので見た目は伊藤淳史でもすぐに見分けがつきますね。台風の目の小悪魔「誰袖」も2代目大文字屋の花魁として徐々に本領を発揮していきそうで怖い。
さて、大河ドラマ「べらぼう」で順調に成り上がってきた蔦重ですが、21話では大きな挫折を味わいました。前話で西村屋の「雛形若菜初模様」をパクって出版した「雛形若葉初模様」が、全然売れないのです。理由は、「指図」。指図とは、摺師が作品の摺りを行う際に絵師や版元から受ける指示のことです。色の配置や濃さ、摺る位置や紙のサイズなど、さまざまなことを指図しますが、これにより版画の最終的な完成度がかなり変わるのです。要するに、モノマネ上手な歌麿のおかげで元祖に負けない下絵は描けても、蔦重の指図の力量不足により発色が悪く、結果的に西村屋の錦絵に及ばなかったというわけです。これは、現代社会でも同じですよね。例えば、生成AI。生成AIでクリエイティブなものを生み出すことはできますが、生成AIに何を作ってほしいのか、具体的に、的確に指示を出せるかどうかで、完成品の質が変わります。
この具体的で的確な指示を出せるようになるためには「経験」が重要ですが、蔦重もその「経験」が足りなかったということです。私も似たような経験を最近しました。浮世絵カフェ蔦重では、新たな挑戦として自らが版元になって、蔦屋重三郎の名作を復活させることに挑戦しています。木版画の制作工程では版元と彫師・摺師さんたちへ指示をしなくてはいけない場面に遭遇しています。復刻木版画の制作には工程・技術・素材・時代背景など総合的な知識と経験が必要であり、さらに職人さんたちとの良好なコミニケーションが最重要だと痛感しました。版元がたしかな指示ができないと意図した作品は出来上がりません。今回のドラマでは、経験と知識の両方が蔦重には足りなかったと思われます。西村屋のいうとおり多色刷り錦絵は一朝一夕の生半可知識ではできません!
また21話では、落ち込む蔦重にさらに追い打ちをかけるような出来事が起こります。
その要因を作ったのが私の推し、山東京伝(北尾政演)でした。政演が山東京伝という名で、鶴屋から青本を出版したのです。蔦重はそれまで、絵師としての北尾政演と深く交流していましたが、政演の戯作者としての才能を見出すことはできませんでした。その才能を、よりによって蔦重と因縁深いライバル店の鶴屋が見出したのです。そのおかげで、山東京伝は大きく飛躍していきました。自分の力量不足を痛感し、自信を失う蔦重でしたが、大田南畝が「経験不足が蔦重のいいところ」と励まします。「だからこそ、ずっとやってる奴には出せねえものを出せんじゃねえか」という言葉で、蔦重は自分の強みが企画力にあることを再認識します。
近い将来に蔦重は今回の挫折を乗り越えて山東京伝とは黄金コンビとなって「吉原傾城 新美人合自筆鏡」を完成させます。このエピソードはもうちょっと先の話になりそうですね。
そこから、続々とアイデアを口にするのですが、山東京伝と黄表紙、洒落本でヒット作を連発します。それは今後のドラマの楽しみですね。
また、今回の見どころとしては役者さん達の演技が印象的でした。松前藩主・松前道廣を演じたえなりかずきさんの怪演、花魁の誰袖を演じる福原遥さんの妖艶な演技、前話で亡くなった「かぼちゃの旦那」こと大文字屋の二代目として再登板となった伊藤淳史さんが演じた、前キャラクターとのギャップの激しさなど、見どころが満載でした。今後の展開が楽しみです!