名所江戸百景 箕輪金杉三河しま(みのわかなすぎみかわしま) 歌川広重 安政4年(1857)刊

江戸時代から大正期までは新吉原の北にある三河島(現・荒川区東日暮里)は鶴の飛来地でした。丹頂鶴や真名鶴が飛来する11月になると毎年、竹の囲いをめぐらして鶴の餌付けが行われていたようです。現在ではまったく想像がつかない風景ですが、もともと吉原より北は「葦」がしげる湿地帯だったので鶴にとっては良い餌場所だったのでしょう。将軍が鷹狩りで鶴を捕獲し、朝廷に献上する儀式「鶴御成(つるのおなり)」の猟場でもありました。
  丹頂鶴の翼幅は一間を超える大型な鳥ですが、広重は「空摺」をつかって鶴の大きな羽の立体感を演出しています。ふわふわの羽で羽ばたく絵は活き活きしています。