おすすめ作品 『江戸生艶気樺焼』えどうまれ うわきのかばやき
抱腹絶倒!黄表紙のベストセラー
醜かわいい艶次郎が色男を目指す
『江戸生艶気樺焼』は山東京伝の代表作であり20代で最大のヒット作でした。浮世絵カフェでは江戸期オリジナル作品を常時展示しています。

黄表紙でもっとも有名が挿絵~仇気屋(あだきや)の一人息子である艶二郎
豚鼻を京伝鼻と呼んでいる。京伝は色男だったが、自らを描くときはわざと醜男に描いていた。
主人公は百万両分限(百万長者)の仇気屋(あだきや)の一人息子である艶二郎(つやじろう)19歳。江戸の若旦那としては典型的な浮気者で生来好色の承認欲求が強く思慮浅く、江戸時代の若者の典型でした。遊里の女性にもてはやされる新内節(しんないぶし)にでてくる色男や歌舞伎役者のように浮名をながしたいと思っていました。
主人公の艶次郎は醜男でありながらうぬぼれが強く,悪友の道楽息子北里喜之介,太鼓医者輪留井志庵 (わるいしあん) を誘って,色男の評判を立てようと画策します。架空の情人の名前を腕に刺青したり、芸者に金をやって家に駆込みをさせたり,女郎を身請けして駆落ちの狂言を仕組んだりします。女郎を金でやとって演技させていることを知らない艶二郎の家の下女たちは「不細工な若旦那に惚れるとは物好きな変わり者だ」と陰口をささやきました。物語の結末では、遊びの限界や愚かさを示すようなオチが用意されており、「行き過ぎた遊びの結末」を教訓的に描いています。

艶次郎は色男になりたかったが、極端な行動で騒動をおこす
その滑稽で突飛な行動とぶさいくな牡丹鼻は「京伝鼻」「艶次郎鼻」と呼ばれました。本作品の流行で艶二郎という名は勘違い男の代名詞となりました。
本作は、黄表紙(江戸時代の風刺的な絵入り読み物)の三大作品と云われています。『江戸生艶気樺焼』(山東京伝)『金々先生栄花夢』(恋川春町)『御存商売物』(山東京伝)これら3作は大変人気を博しました。
これらの作品は、町人文化や社会風俗を反映しながら、ユーモアと風刺を交えて遊里文化を面白おかしく描いた作品です。合わせて一読すると江戸文化をさらに深く理解する一助となります。
『江戸生艶気樺焼』
作者:山東京伝(さんとう きょうでん)
画:北尾政演(きたお まさのぶ)
版元:蔦屋重三郎(つたや じゅうざぶろう)・耕書堂(こうしょどう)
発売年:天明5年(1785年)浮世絵カフェの蔵書は耕書堂のオリジナル。題箋が「江戸生浮気蒲焼」となっていること奥付が初摺とは違うので2摺と思われる。
販売価格:当時の黄表紙の相場を参考にすると、銀3分~4分(約200~400文)程度と推測されます。
4回以上の重版となった。3摺りからは題箋(タイトル)が「浮気蒲焼」にかわった。